
さて、麺が丼に収まったら、つぎはトッピングだ、焼豚、シナチク、ネギ、鳴門をのせて、さあ出来上がり!とはいえ、修行の身、練習中なので、わたしの昼飯になるときは、トッピングはネギをのせるだけ。ただ、わたしは、そこに大量のラー油を注いで食べるのが大好きだった。その辛みとごま油の香りがなによりのトッピングであった。わたしは、この店で働くまでラー油というものを知らなかった。餃子は好きでよく食べていたはずなのだが、いつも酢一醤油だけで食べていたのだろう。ラー油を加えた記憶がない。この店のラー油は定期的に店長が作っていた。ごま油に白絞油をくわえたものを、中華鍋のなかでグツグツと煮る。やがて、温度が上がっていったところに、大量の粉末の唐辛子を投入し、さらに時間をかけて煮詰めていく。そうして作ったものを冷ましてから、篩で漉すと、綺麗な朱色の少しどろりとしたラー油が出来上がる。
ラーメンを卒業すると、次は、チャーハンや焼きそばなどの鍋を使う料理を教えてもらい、その失敗作が、わたしの毎日の昼食となっていった。そのあとには、八宝菜や肉団子へ移っていき
それらの失敗作もやがてわたしの毎日の昼食となっていった。
さすがに、毎日毎日中華料理の出来損ないばかりでは可哀想だと思ったのだろう、ときには目玉焼きを桂ちゃんがつくてくれることがあったし、そのとき、目玉焼きの作り方も教わって、それ以後は自分でも時々作って昼食にした。
あるとき、店長が大根を短冊切りにして、ボールの中に入れ、生醤油をそこにたっぷり注いで一日たつと、おいしい大根の醤油漬けが出来上がり、私たちの昼食に出してもらった。残りの大根をさらに棒状に刻んで、潰したにんにくと一緒にさっと炒めてから、醤油とラー油を注いで、大根炒めの出来上がりで、これもわたしたちのささやかな賄い昼食の食卓に上った。いただきまーす!