
北国の街、金沢に降り立った私はあるラーメン屋さんの表の店員募集ビラをみて、そこの店に声をかけたのだが、そこの店主が言うには、近々、店を畳もうと思っているので、人を傭うことは出来ない。表のビラはずいぶん前に出したもので、すっかり忘れていた。(そんなー!)でも、他の店を紹介してあげよう、といってどこかに電話してくれて、そちらのオーナーが、今夜はもう遅いので、とりあえず今日はこれこれの宿に泊まって、明日会おうということになった。そして、翌日、市内に2軒の店をもつ中華料理店で働くことに話が決まり、繁華街にあるビル、たくさんの飲み屋やバーやスナックが入っているビルの5Fのお店「眠眠」がその勤務先となった。
夜中に仕事が終わると、近くの銭湯で汗を流し、朝までやってる定食屋「宇宙軒」で夜食をとり、上下とも白衣の仕事着にマフラーを巻いて、雪の降る北国の街をとぼとぼと行く。犀川大橋を渡りきると、右に折れて、雪のつもった細い道をだらだらと歩いて行くと、旧花街のエリアなので、角角に、厚化粧のお姉様方が二三人づつ、寒そうに立っていて、「お兄さん、お疲れさま、たまにはどう?遊んで行ったら?」などと、声をかけてくるのを黙ってやり過ごして、家路を急いだものです。もっとも、月日がたつと後半の「たまにはどう?遊んで行ったら?」の件はなくなり、ただの挨拶だけになったけど・・・